| 以下の文章は、11月9日、ソウルの成均館大学校の教室を借りておこなわれた、韓日共同ワークショップ「住民登録法と住民基本台帳法」において発表された文章を、抜粋翻訳および要約したものである。要約部分には[ ]をつけた。 |
情報化社会における
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1.情報化社会における国家の国民統制と監視ア)監視技術の発達と監視活動の拡大(1) 今日、監視技術は私たちの想像を超えるほどに発展している。私たちの社会のあちこちにCCTVが設置され、リアルタイムで監視がおこなわれているのである。特に最近はデジタル化されて、画質も鮮明なだけでなく、無制限の貯蔵が可能で、必要に応じて検索が可能であり、ズーム機能、角度調節機能、夜間撮影が可能な赤外線撮影機能、透視機能まで備えられている。顔認識(形態認識)技術が発達し、遅かれ早かれ、探している人の顔写真を入れれば、顔の特徴によってCCTVに撮影された画面のなかから同一人を識別することができるようになるという1)。クレジット・カードや電子貨幣の発達にしたがって、取引記録が電算化され、全ての国民の取引情報を通じてあらゆる活動を追跡することができ、その人の習慣、思考までも把握することができるようになった。携帯電話を利用した位置追跡によって、その人の行動をいつでも追うことができ、交通カードの記録によって移動状況もいつでも把握できるようになった2)。インターネットを通じた意思疎通の活動も、ログ記録やクッキーを通じて把握することができ、電子メールや電子掲示板に残した文章も、IPアドレスを追跡したり、サーバに貯蔵された情報にアクセスすることで把握することができるようになった。ある人の髪の毛一本からも遺伝子情報を分析し、その人の過去、現在や、未来まで予測することができるようになった。
(2) 最近、国家は国民についてのあらゆる記録を情報として貯蔵し、電算網を構築した後、これを統合し共同利用するという作業を推進している。「電子政府の具現」という名のもとに推進されているこの作業は、行政の透明性、効率性、国民に対するサービス向上という名目で、全国民の情報を一つのシステムとして統合し、管理することを目的としている。そして、国家はひきりなしにスマート・カード導入を試みようとしており、DNA情報の収集等、生体情報の収拾も推進しようとしている。今や、一国民のあらゆる情報が国家にまるごと把握されるようになったのである。 (3) このような監視活動の飛躍的増加は、情報処理技術の発達、生命工学技術の発達により、監視技術が画期的に発展したことに加えて、現代の情報社会において情報として処理し得る量や範囲が画期的に拡大したために可能となったものである。さらに現代消費社会において、情報が巨大な財産的価値をもつようになり、手軽な統制の手段となったからである。情報は権力なのである。 イ) 監視の問題点(1) 基本権の侵害 監視の最も大きな弊害は、監視行為が、監視された者の基本権を侵害するというところにある。特に、最近発達した監視技術は、監視される者の一挙手一投足が監視可能となったことにより、プライバシー侵害を越えて、その人の行動や思想までも把握することができるようになった。監視行為によって監視される人は、プライバシーと人格権はもちろん、表現の自由、行動の自由、思想の自由までも侵害されるようになった。 (2) 民主主義の歪曲 監視行為によって監視される者の表現の自由、行動の自由、思想の自由が侵害されることによって、国家と民間における民主主義は抑圧され歪曲される。また監視行為により収拾された情報をデータベース化し、これを通じて計画を樹立し、管理と統制し、評価をする場合には、その過程において再び国民と消費者・労働者の意思、つまり民主主義が歪曲されることになる。 (3) 排除と差別 監視行為により収拾された情報をデータベース化し、これを管理と統制の手段とした場合、国民と消費者・労働者はデータベースによってカテゴリー化される。このようなデータベースを通じた管理と統制は、情報主体を、一つの主体としてではなく、固定した客体としてのみ見させ、このことによって国民と消費者・労働者に対する差別と排除がなされることになる。 |
2. 国家の監視と統制に対抗する第3世代プライバシー権としての「反監視権」の定立と反監視委員会の必要性ア) 第1世代プライバシー権と第2世代プライバシー権主として個人間の私的な領域において、プライバシーの侵害が問題となっていた過去においては、i) 私生活空間の侵害禁止、ii) 具合の悪い私的な事がらの公表禁止、iii) 誤解を生む表現の禁止、iv) 名前や肖像の営利的使用の禁止等を通じて、個人のプライバシー侵害を保護することによってみたされた。これを第1世代プライバシー権と呼ぶことができる3)。
第2世代のプライバシー権とよぶことのできる個人情報に対する自己決定権は、国家の活動や取引が活発となり、個人情報の収集と統合が活性化された時期に定立された権利である。これはドイツの連邦憲法裁判所における違憲決定を契機として定立されたものであり、第1世代プライバシー権より積極的な意味を持っている。その内容は、1980年のOECDのプライバシー保護のための8原則として具体化されているのだが、それは、i) 個人情報の収拾時における告知および同意の原則、ii) 情報内容の正確さの原則、iii) 目的の明確化の原則、iv) 利用制限の原則、v) 安定性確保の原則、vi) 公開の原則、vii) 個人のアクセス権保障、viii) 責任の原則等である。この権利は、個人と企業や国家の関係において発生する問題に対する保護手段として機能してきた。すなわち、これは取引を通じた個人情報の収集、国家や民間領域と個人の1:1の関係を中心領域として、個人の自己情報に対するコントロール権の保障を通じて、個人の人格形成の核心を保護しなければならないという理念から認められてきたものである。 イ) 第3世代プライバシー権としての反監視権の内容しかし、今日の飛躍的な監視技術の発達4)にしたがって、国家および企業は極めて低廉な費用で、すばやく大規模に個人に対する体系的な情報を収集、管理することができることはもちろんのこと、個人のあらゆる活動(動き、あらゆる取引行為、あらゆる意思疎通行為)や思考までも分析、監視することができるようになり、さらには遺伝子等の生体情報を利用して個人の現在だけでなく過去や未来までも分析できるようになった。これにしたがって、監視の問題は、プライバシー権や個人情報保の自己決定権としては解決できない新しい局面の問題を提起している。今日のこのような監視によって惹起されている問題に対応するために、第3世代プライバシー権とよび得る、より高度の権利である「反監視権」が定立されなければならない。反監視権は、次のような点において、既存のプライバシー権や個人情報の自己決定権とは異なる内容をもっている。
(1) 民主主義と人権に対する重大な脅威に対応する権利である (i) 反監視権は、監視が民主主義と人権に対する根本的な脅威であるという問題意識から出発する。今日の監視は、単純なプライバシー侵害や人格権侵害とは根本的に異なる様相を示している。今日の監視は、市民の人格権、行動の自由、学問思想の自由、良心の自由、宗教の自由、言論・出版の自由、表現の自由、政治活動の自由のような基本権の核心的な領域を脅かし、民主主義を脅かしている。現代社会において、監視に対する対応は民主主義と人権保障の核心問題となったのである。 (ii) したがって、過去のプライバシーの保護や個人情報の保護とは異なる、反監視権保障の核心は、民主主義の原理、権力分立の原理、基本権保障の原理に立脚し、国家と市民社会の監視行為を効率的にコントロールすることのできる、法的・制度的な装置を整備することにある。 (iii) 詰まるところ、反監視権が保障されるためには、国家と民間領域において民主主義と人権を脅かすあらゆる監視行為に対して、民主主義、権力分立、基本権保障の原理に立脚して、これをコントロールし得るような位相をもち、効果的に機能を遂行することができる制度的装置が整えられる必要がある。 (iv) 監視技術の発達は、既存の法源による監視活動に対するコントロール制度を無力なものとする。既存の監視活動に対する法源の延長上でのコントロールは、隠密に、大規模に、痕跡を残さずに行うことのできる今日の監視行為に対する効果的なコントロール手段たり得ない。したがって、司法部によるコントロール外の、別のコントロールが必要なのである。その役割を果たし得るのが、国会と独立的な第三者機関である。 (2) 保護の対象が個人のプライバシーや個人情報5)に限定されてはならない 反監視権は、個人のプライバシーや個人情報を越えて、個人と集団の思想と行動の自由を制限するあらゆる行為をコントロールの対象としなければならない。以前は個人の私生活の保護や個人情報の保護が問題となってきたので、保護法益や保護の客体は個人であり、保護の対象も個人が識別されるかどうかが規準となっていた。しかし監視技術の発達により、監視は思考と行動に対する統制に変質した。したがって保護の客体も、個人に限定されるべきでなく、保護の対象も個人が識別されるかされないかにかかっている個人情報にとどまるべきではない。団体や集団や個人の識別可能性にかかわらず、思考と行動に対する統制が加えられるあらゆる行為、計画、制度を監視行為とし、これに対応して適切な保護がなされなければならない。
(3) 個人情報収集時の告知あるいは同意の原則を通じて問題を解決しようとする契約的な思考を越える必要がある 個人情報収集時の告知や同意を前提とした個人情報保護の原則は、個人が対等な地位で個人情報を処分することができるということを前提としている。しかし、現代社会における監視は、@告知や同意の過程を経ずとも、いくらでもなされ得るし、A絶え間ない新技術の発達は告知や同意に、意図していたのとは異なる新たな監視の効果を生み得るし、B今日の市民は国家や企業の情報収集や監視に同意しないでは経済活動をすることができないような、不平等な構造に編入されている。したがって、このような現実を踏まえて、契約的な思考から抜け出し、侵害の効果を規準とし、基本権保護の観点から監視に対応し得る新しい原則が模索され、定立されなければならない。 (4) 監視計画の樹立段階から参与しコントロールする権利が保障されなければならない 現代社会における監視技術の発達に照らしてみるとき、監視計画の樹立は、思考と行動に対する統制の計画として作用する。例えば国家の行政行為の内容としてどのような個人情報を収拾するのか、個人と集団の行動をどのように追跡し記録するのかに対する計画(例えば住民登録制度や国家基幹電算網)は、個人と集団の思考と行動に対する統制の青写真となる。したがって、市民はこの過程に参与し、コントロールすることができなければならない。そして企業や民間の領域のあらゆる監視計画の樹立にも参与し、介入することができなければならない(クレジット・カード会社のデータベース、病院や大学のデータベース、企業の人事管理データベースやERP等)。あらゆることが記録され貯蔵され分類されるデータベース社会において、民主主義や人権に影響を与え得る記録、貯蔵、分類に市民と労働者が介入することができなければならない。 (5) 国家の監視活動以外に民間の監視活動に対してもコントロールすることができなければならない 最近においては、国家だけでなく民間領域や雇用関係領域における監視が重要な問題として浮上してきている。これを効果的に規制することのできる方策が整えられなければならない。このために民間の監視活動に対しても、それが及ぼす人権侵害的な要素を綿密に評価し、適切な規制がなされなければならないだろうし、個人情報保護の原則の個人情報主体の個人情報閲覧、訂正、削除請求権と同様に、企業や使用者に対して監視活動を受けた者が、監視活動に関する情報の公開を請求することができるように、制度的な装置が設けられなければならない。 ウ) 反監視権の具体化のための立法案 − 仮称「監視行為の規制と反監視委員会に関する法律」の制定必要性(1) 反監視権の観点からみた現在の法制 こうした観点からみるとき、現在のわが法制は、ただ個別的なプライバシーの侵害に対する救済や、個人情報の侵害に対する救済のみをその内容としているだけであり、情報化社会の発展した国家と民間の監視活動に対して効果的に対応し得る内容を全く備えていない。 (2) 仮称「監視行為の規制と反監視委員会に関する法律」の基本内容 以上見たように、情報化社会における国家と民間の監視活動による民主主義と人権侵害の危険性を効果的に抑制するために、何よりもまず次のような反監視立法が設けられなければならない。 1) 目的 2) 他の法律との関係 3) 「監視」の定義 4) 監視活動の規制
5) 監視活動の計画段階に対する介入権 6) 反監視委員会7)
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3. 国家の個人情報の収集、利用と関連した統制 − 公共機関の個人情報保護に関する法律(1) 概観この法は、公共機関がコンピュータによって処理する個人情報の保護についての法律である。この法はOECDの個人情報処理についての原則に根拠をおいて制定されたものであるが、個人情報主体の権利が各種例外規定によって形骸化されている。 (2) 問題点と改正の方案ア) 適用範囲の拡大 [コンピュータによる個人情報管理に限定しないで包括的にすべきだ] イ) 適用排除範囲の曖昧さ [国家安保情報を適用除外にしているが、むしろこうした情報こそが人権侵害の問題が一層深刻なのであって、一般的に適用除外にせず、個別的な次元にとどめるべきだ] ウ) 個人情報収集の範囲 [個人情報収集は目的達成に必要不可欠な範囲に限定する必要があり、人権を侵害する憂慮のある情報は法律により最初から収拾を禁止ないし制限すべき。] エ) 個人情報ファイルの保有範囲と事前通報 [保有すべき個人情報ファイルが適切かどうかを反監視委員会がコントロールする] オ) 保有情報ファイルの公開原則 [公開原則が極めて曖昧なので是正すべき] カ) 個人情報ファイルの公示 [公示の範囲が極めて少ない。情報システムの名称からセキュリティ等まで含む必要] キ) 個人情報の目的外利用の禁止および他機関への提供の制限 [但書での例外規定が極めて曖昧] ク) 個人情報の閲覧と訂正請求 [不当な閲覧制限がある] |
4.国家の国民に対する監視と統制活動とその対応の方策ア) 国民監視の土台である住民登録制度を根本的に変化させなければならない [略:後日補足] イ) 膨大な課税情報の収集、利用は厳格に課税目的に限定しなければならない [略:後日補足] ウ) 治安・国家安保と関連した国民監視と統制を厳格に規制しなければならない [略:後日補足] エ) 福祉分野の無分別な情報統合を阻止しなければならない [略:後日補足] オ) その他、監視と統制の方法として盗聴、検閲、CCTV撮影、位置情報、生体情報の活用等を抑制しなければならない [略:後日補足] |
5. 電子政府の推進による新たな危機 − 行政情報の統合および共同利用[略:後日補足] |
6. 結論国家の国民に対する監視と統制の活動については、独立した組織による規律と規制が必要である。国家の国民に対する個人情報収集の範囲を徹底して再審査し、範囲を限定し、目的を明らかにし、目的別に徹底して分離しなければならないだろう。住民登録制度を根本的に変化させなければならない。そして国民IDとして機能する可能性があるものを法で保護しなければならないだろう。その他の国家や地方自治団体の国民に対する監視と統制行為についても、独立的な組織による規律や規制がなければならない。 (抜粋・要約・翻訳 板垣竜太) |